インタビュー

INTERVIEW 05

松岡 史晃さん 福田 徹也さん

アイアールとつながりの深い「日本拳法」は、昭和の初めに澤山宗海という武道家が、空手や少林寺などを改良して考案し、防具装着により、拳で突く、蹴る・投げるなどの技を駆使して闘う競技武道である。禁じ手が少なく、人間の体に備わった自然な動きを引き出すことで安全性が高く、かつ実践的であることから大学の部活・サークル活動を中心に普及してきた。
かつて、大学時代に全国でトップクラスの成績を収めた二人が、世代の違いも、会社・職種の違いも超えて、生き方・仕事について語り合っていただいた。

拳法がつなぐ縁 ~将来を見続けていた者が勝者となる~

お二人の拳法との出合いについて教えてください。

福田 
大学に入ったときに、拳法部に仮入部した同じ寮の仲間が練習後に花見に行くというので、気楽についていったのが始まりです。ボクシングが好きだったこともあり、個人スポーツで勝ち負けがはっきりしている点が自分に合っていました。当時は関学拳法部の一時的な低迷期で、上級生も少なく1学年3人くらいで、わりと早くに試合に出られるようになりました。高校時代にラグビーをやっていたおかげで足腰も強く、練習についていくのもさほど苦労せず。強い同級生が何人かいたので、お互い切磋琢磨しながら、成績を上げていきました。

松岡 
僕は6歳のときに親に連れられて近くの道場に通うようになりました。中学では僕もラグビーをやっていました!高校で拳法部に入り、毎日拳法の生活になりました。

お二人とも学生時代に輝かしい成績を残されています。福田さんは全日本で団体優勝し、全関西MVP、松岡さんも全日本個人で準優勝、全国選抜では団体優勝だそうですね。卒業後も続けているのですか?

福田 
社会人になってからはずっと離れていました。しかし5年ほど前、ちょうど松岡君と同じ世代で、大学の後輩からすごい選手が出てきて、日本拳法界に大旋風を巻き起こしていたんです。それに刺激を受け、フツフツとまた関わりたいという気持ちが出てきました。仕事でも家庭でも少し時間ができたこともあり、連盟の審判をさせてもらうようになりました。同時にごくたまにですが、道場で汗を流すようになりました。

松岡 
僕は6歳のときに親に連れられて近くの道場に通うようになりました。中学では僕もラグビーをやっていました!高校で拳法部に入り、毎日拳法の生活になりました。

建設業で活躍する拳法出身者は多いようです。何か共通点があるのでしょうか?

福田 
私も建設会社の営業職に就いていますが、アイアールは未経験から育成しようという会社なので、何人か拳ー法を通じて知り合った若者を紹介させてもらっています。
拳法をやっている人間の良い面は、物怖じしないところ。また「はい、すみません」と素直に謝ることができます。精神面はタフであり、肉体的にも強い。日々殴り合って蹴り合ってますから。武道は上下関係も厳しい世界なので、怒られることや罵詈雑言にも耐久性があります(笑)
建設現場で最も大事にされるのは「安全」。ケガ人が出たら現場は止まってしまうから、安全こそがトコトン守るべきものです。そのためには怒鳴られることもしばしばで、まず指導された通りに行動できることがとても重要なんです。そんなときにもめげない拳法出身者は、建設業とは相性がいいと言えるかもしれません。

松岡 
卒業後は少しやっていましたが、いまは止めてしまっています。大阪出身ですが、アイアール入社後は広島で半年ほど、その後、東京勤務になったばかりです。

福田 
じゃあ今度、東京の道場を紹介しますよ。

長い間離れていた拳法に引き寄せられたのは何故でしょうか。

福田 
一言でいうと、拳法は「自分を表現する手段」だと思っています。不器用だから他にはなかった(笑)。拳法を通じて学生時代のつながりが戻ってきたり、後輩にアドバイスできることでなんとなく自分の役割を確認できたりしています。自分の居場所に戻った感じです。

鈴木 
じゃあ今度、東京の道場を紹介しますよ。

若いときに何かを続けていた、というのは強みになりますね。

福田 
「一所懸命」という言葉がありますが、その語源は「昔、武士が賜ったひとつの所領地を命がけで守り、それを生活の頼りにして生きた」という話に由来します。転じて物事を命がけでやるという意味で使われるようになりました。あっちがどうだ、こっちがどうだということではなく、一つのことについて自分の役割を考えて真摯に向かって頑張ることが拳法でも仕事でも大事なんだと思います。
松岡君のように子供のころからやっていたら、十分にそれを感じるよね。

松岡 
僕にとって拳法道場は「自分を育ててくれた場所、作ってくれた場所」だと思っています。負けず嫌いな性格は拳法で培われたもの。どんなことでも、まずはやってみようと思えるようになったのは大きな財産ですね。

武道って、礼儀やしきたりが厳しそうなイメージです。

福田 
確かにそうですね。学生時代には正直なところ、カタチとしてやらなければならないからやっていましたが、20~30年と社会人として生きてくると、そこに意味があることを改めて感じます。
「挨拶」には語源的には「心を開く」という意味があります。練習相手、対戦相手に対する尊敬や労りの念をもちながら、心を開いて「どうぞ教えてください。私も精いっぱいやります」と、謙虚な気持ちで向き合うんです。
仕事も同じですね。一人ではできない。自分を成長させるためには、時に自分の考え方を変えることも必要だし、いろいろな人に教えてもらわなければいけません。
心を開いていろいろな人に教えてもらいながら成長していくんです。素直に周りの人の話を聞くほうがいい。自己主張ばかりしていると、理屈は正しくても、「あいつはアドバイスしてやろうと思っても反論されるから」と思われてしまう。一度そういうレッテルを貼られると情報が入ってこなくなり損してしまいます。

松岡 
僕は建設業未経験でこの仕事を始めたので、上司や職人さんから教えてもらうことがとても多いです。職人さんには年代も性格もさまざまな人がいて、自分は少し人見知りな性格なので、初めのうちは「聞きにくいな」と思うこともありましたが、「聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥」と思い、積極的に聞くようにしてきました。皆さんとても親切に教えてくれます。

写真右から、福田 徹也氏:総合商社勤務、メディア・生活関連事業部門でコンプライアンス推進に従事。第24回全日本学生拳法選手権大会 団体優勝、関西学院大学出身。
松岡 史晃:2015年アイアール入社、未経験から土木施工管理技士を目指して奮闘中。第24回全国大学選抜選手権 団体優勝、第27回全日本学生拳法個人選手権 準優勝。大阪商業大学出身。
聞き手:杉田 守弘(アイアール株式会社 本部長)

拳法は一撃必殺イメージの個人競技ですが、フェアプレー精神とかチームワークは身に着くのでしょうか。

福田 
武道の礼節は、武道が基本的には「殺し合い」ではなく「生かし合い」だということを示しています。ビジネスでいうWin-Winにも通じるものがあると思います。

ラグビーの“戦い終えたら敵味方関係なく同じ仲間”という「No Side」の考え方に似ていますね。お二人ともラグビーをやっていましたし、ぶつかり合うという点でも共通点がありますね。

福田 
ラグビーには「One for all, all for one.」という考え方もあります。拳法は個人競技ですが、団体戦は非常に熱いし、やっぱり一人じゃないから頑張れるっていうところがあります。練習のときも、腕立て伏せは一人なら50回しかできなくても、みんなでやると70回くらいできてしまう!

松岡 
自分も練習がすごく苦手ですが、皆がやっているから「やらなあかん」と思う。いつの間にかできていて、終わってみればすごく達成感があります。

失敗したり、挫折した経験はありますか?

福田 
私は大学4年の最後の一番大事な全日本の試合で、十分な練習や準備にもかかわらず格下の選手に負けたんです。悔しくて涙が止まりませんでした。一生忘れられない。
「世の中、やればできる」「頑張れば必ず結果はついてくる」と言われます。また学校の先生が子供たちに「夢を持て」「努力は裏切らない」と、無責任なことを言うけれども、結果が伴わないこともあるんですよ。それが現実なんです。但し、一所懸命やらなければ結果はついてこないのは事実です。

松岡 
僕も格下の相手に負けたことが何度もあります。小さな大会ほど、そういうことが多かったです(苦笑)

福田 
有名な話で、「レンガを積む職人」の例えがあります。レンガを積む作業をしているひとに旅人が「何をしているのか」と尋ねるのです。1人目は「単にレンガを積んでいる。それが仕事だから」と答える。2人目は「壁を作っている。その仕事で生きる糧を得ている」と答える。3人目は「教会を作っている。そこに町の人が集うのです」と答える。
何のために働くか、それがどんな価値をもたらすかをイメージできているどうかで、仕事の質が変わってくるんですね。必ずしも成功するとは限らない。でも、そんな風に将来を考えていってもらえたらいいなと思います。

だんだんと自分の領域を広げていくこと。

福田 
松岡君はなぜアイアールではたらくようになったの?

松岡 
大学を卒業してから、フリータ―をやっていました。ところが、去年11月に車にはねられて、生死の境を彷徨いました。「このまま死ぬかもしれない…」と思った。そして「もうちょっとちゃんと生きよう」と思ったときに、紹介してもらったのがアイアールです。

福田 
将来のことは考えている?

松岡 
いまは目の前にあるものを黙々とやっています。この仕事はなんやかんやしんどいこともあるけど楽しいし、続けていきたいです。そのなかで自分も上に上がりたいですし、経験を積んで資格を取って、自分を欲しいといってくれる現場があるような技術者になりたい。与えられた以上のことをしたいと思います。

福田 
現場の仕事って大変でしょう。でも昨今リアルなところでの仕事の仕方が忘れられている感じがあるから、汗かいて、仕事をカタチに表していくことは心身両面で健康的でいいですよね。

松岡 
自分は同じことを繰り返すより、毎日変化があるほうが合っています。現場ではいろいろなことが起こります。毎日新しい体験なのでわからないこともありますが、それに臨機応変に対応していって、うまいこときっちり運んだら「今日も安全に終わった」という達成感があります。
現場って全部がひとつにならないと事故が起きたりするので、やはり報連相というか細かいコミュニケーションが大事だなと思っています。

福田 
例えば10年後を考えると、このままアイアールにいれば中堅社員になっているはずですよね。会社の方向性も考える立場になっていくと思う。
縁あって入ってきた組織の中で、何がベストかを考えて、まわりの人たちと話ながら、「自分はこう思います」とか「それはこの会社をこうしたいからです」とか「この会社をこうすることによって自分はこうなります」とか、だんだんと会社との関係や自分の領域を広げていくといいと思う。
学生チャンピオンに近づいた人なんだから、自分に誇りをもって何でもチャレンジしていってほしいですね。私も同じちょっとだけ痛い目にあった仲だから(笑)、応援していますよ!

大学の垣根も超えて、仕事の垣根も超えて繋がっていくっていいですね。どうもありがとうございました。

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